2014年6月9日月曜日

フィンランドの高齢者ケア ストーリーセラピーで考えること

  
      新しい試みがアクティビティとして始まっています.レジデンスは絵、カタログ、雑誌の切り抜きから、好きなものを選びます。セラピストがそれについて質問したり、会話を試みます。お母さんと湖畔で散歩してるつもりになったレジデンスは、時間がそこに戻っているのか、彼(弟か?)がこれを持って、とか、花はたくさんあるけど、家には持って帰らないわ、とか。その間に、レジデンスの選んだ切り抜きを次々と1枚の画用紙に話しながら、 貼付けていきます。完成したストーリーピクチャーをベッドテーブルや窓に飾ってあげます。残念ながら、ほとんどのレジデンスは半日もたたないうちに、それを自分とセラピストが一緒につくったことさえ忘れてしまうことが多いようです。それでも、自分の好みで選んだものなので、まあ、素敵ねと声をかけてあげると、とてもうれしそうな様子。なんらかの昔の記憶につながっているのかもしれません。短期記憶より、はるかに多く長期記憶が高齢者の能に蓄積されているという研究報告が出版されています.確かに、一人で、声を出して話している高齢者の多くの話は、自分の子供の頃、若いときのことです。
  その他に、何人かのレジデンスとセラピストの作業をそばで観察していて、気づいたことがあります。どの切り抜きが好きなの?選んでねと声をかけても、多くのレジデンスは容易に選ぼうとはせず、黙り込んでいる場合が多いのです.中には、セラピストに向かって、あなたが選んでとか、あなたが知ってるでしょとか言い出す人も多いのです.それで、ケアスタッフの話してくれたレジデンスとの戦いのことを思い出します.ここに居住しているレジデンスは、多くが長期療養病棟から移り住んできたか、または自宅での一人暮らしの不可能になった人たちです。とくに、長期療養病棟から移ってきたばかりのレジデンスに多く見られるのは、ケアスタッフへの依存性の強さだそうです。このユーコラでは、朝、起床して、洗顔の後、2、3の服装のチョイスを示し、今日はどの色のシャツにする?とか、スカート?ずぼん?とか、自分の意思を促すようにしています。ところが、新入居者のほとんどが、始めのうちは、あなたが選んでとか、あなたが知ってる人でしょう!とか、いらついたりするのだそうです。その反応にめげづ、一呼吸をおいて、今日は自分でえらんでみましょうねと、声かけして、見守りの姿勢を続けていくと、2,3ヶ月もすれば、その依存性が徐々に弱まり、そうして、自分で選ぶ、自分で考えるということを、少しづつ取り戻してくるそうです。むろん、そうはいっても、認知症を止めることはできませんが、その進行をゆっくりにすることはできるというのです。認知症では、本人も認知症が始まったと自覚している人も多く、24時間のうち、能が正常に働くときもあるし、また、認知症の中に閉じこもって、まったく自分だけの世界に入り込んでいる人もいれば、薄皮の表と裏側を交互している人もいます。そうすると、自信の欠如が始まり、依存性に繋がるようで、そうすると認知症がますます進行するということにもなります。自分で選んだり、自分で靴を脱ごうとしたりすることで、能のシナプスがまた、やや活発になるということなのかも知れません.手間ひまのかかるケアサービスではありますが、薬に頼り切るということばかりでなく、このような取り組みも有効だと思います.






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