2014年7月29日火曜日

在宅介護か施設介護か

   


   アニッキは87歳、小学校教師を務め、65歳で退職後は夫と2人暮らしでしたが、14年前にその夫が亡くなり、一人暮らしとなったそうです。子供は男の子と女の子の2人。息子は残念ながら20年以上も前に、若くして心臓病で亡くなり、娘は留学先のドイツでドイツ人医師と結婚、以来40年以上ドイツに暮らしています。それでも、自分の兄弟姉妹や親戚がタンペレにいますから、ジムに通ったり、ライティングクラスに参加したりしながら、一人暮らしの日々を送っていました。ドイツにすむ娘は毎年のように、夏休みは家族でフィンランドの両親のサマーカッテージに来ます。その娘も自分自身の子供達、息子はオランダのアムステルダムで日本人のガールフレンドと同居しているし、娘はイタリア人と結婚してスイスに暮らしている、EU、ヨーロッパの生活とはこんなものと考えているようです。留学先で結婚して、そのままフィンランドに戻らなかったのは、なんでもない、それが人生、ハッピーになりたかったからよと話します。
  それが、2年程前からアニッキの物忘れがひどくなりました。まあ、年齢とともに健忘症が進むのは当たり前とは感じてはいたそうですが、その度合いがひどいのに驚いた、とドイツ人の夫がいいます。サマーカッテージで夏休みをいつものように楽しんでいたのですが、その物忘れのために会話が時々ちぐはぐになってしまい、いよいよかと感じたそうです。すでに85歳という年齢のこともあり、一人娘ですので、この際ドイツに来てもらい一緒に暮らせないだろうかと、始めは思案しました。でも、ドイツ語という壁もあり、家族親戚から離れてしまうということで、本人は難色を示しました。
それで、タンペレには親戚も多いことだしと、様子を見ていたのですが、さらに、昨年来、徘徊も始まるようになりました。そして、自宅はフィンランドで一般的なアパートメントですが、昨年転倒、両手を骨折してしまい、大学病院に入院しなければならないことになりました。その後、入院したことで、運動機能が弱体化してしまい、退院後アパートメントの自宅に帰ることにひどく不安を感じたと娘が話します。


   福祉国家であるフィンランドでは在宅ケアサービスを申し込めば、クリーニング、配食サービス、入浴介護、様々なケアサービスを受けられますが、それでも、一人暮らしが可能かしらと心配で、しばらく娘だけでもフィンランドに帰ってくることも、考慮した程だそうです。それが、ソーシャルワーカーとの懇談が進む中で、このグループホーム、ユーコラへの入居の選択がでてきました。個室のレンタル、3食、クリーニング、トイレやシャワーなどの衛生介護など、アニッキの年金から支払い、それに医薬品代などもかかりますから、毎月手元には99ユーロだけ残るしくみになっています。ですが、娘など家族が金銭的に援助することはいっさい必要ないそうです。この、グループホームというフィンランドでは比較的新しいシステムに、ほんとうにほっとしたわと、娘は笑顔で語ります。体操教室、絵画教室などアクティビティも多いしねとドイツ人の夫も同調。それにね、ここに入居以来、親戚家族の訪問回数が、自宅よりもずっと増えたのだよ。長年会っていなかったいとこにも思いがけずに再会したと、嬉しそう。

  現在、アニッキは骨折以来、右手の運動機能が衰えて、食事にも少し補助がいるようですし、ウォーカーでの歩行もややぎこちない状態になりつつあります。自分の個室にいるときは別ですが、外にでたり、アクティビティに参加したりすると、帰るべき自分の部屋がどこにあるか、わからなくなることもたびたび。年齢的にもこのまま、ここで人生を終えることになるのは必然です。

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